皆さんこんにちは、鈴木智成(名もなき医師)です🧑⚕️初めにお伝えしておきますが、僕自身がマンジャロやゼップバウンドを推奨している訳ではありません。
痩せ薬として有名になっているマンジャロですが、2型糖尿病治療薬ですので肥満症に対しては保険が通りません😌ちなみに単にBMIkg/㎡が25以上であることを肥満と言い、肥満により健康障害をきたした場合を肥満症と定義します。

2025年4月に肥満症に保険適用となったゼップバウンドという薬について医師としての視点から、作用機序や実際効果はあるのか?、またどうしたら処方してもらえるのか?等々を解説していこうと思います!!
肥満は自分で治せない?
体質もある
肥満体型なのは単にその人が怠惰なのでしょうか?もちろん自堕落な生活を送っている人もたくさんいらっしゃいます😥
しかし中にはどうしても痩せられない体質の方がいます。
例えば僕の大学のテニス部の先輩医師で部活で、しっかりと週3回はテニスなどの運動をして食事もカロリーや成分までスマホアプリで計算して管理を行った上でBMIが30(25以上で肥満)という方もいらっしゃいます。
多くの方はここまで努力することは難しいですし、努力せずに肥満という人々の方が大多数だと思います😌

しかし中には努力しても肥満体型から抜け出せない人もいるのです。
あなたが肥満を治せない理由3選
僕自身正直に申し上げると肥満症は自らの意志の弱さが多くを占めるという考えも持ち合わせています。メタボリックシンドロームを予防したいという人はこちらの記事もご覧ください😌メタボ(肥満)になるな!
しかし医学的にも一度肥満になってしまうと痩せにくい理由が存在するのでそちらをご紹介します。
1.代謝が落ちる
1つ目は体重を落とす過程で代謝が落ちてしまうという理由です。せっかく体重を減らしたのに安静時や活動時の代謝が落ちてしまうとまた太りやすくなってしまいます💦
体脂肪が減ると脳が体の貯蓄が減ってしまったと判断してしまうため、身体を省エネモードにして熱産生が抑制されて代謝が落ちてしまうのです😳*参考文献【1】
また痩せる前と同じ運動をしたとしても、体重が軽くなった分以前より少ないエネルギーで同じ動作をこなせるようになります。*参考文献【2】
痩せたら同じ感覚でランニングしていてもタイムが速くなります。これが活動時の消費が抑えられる、つまり活動時代謝が落ちる理由です!
安静時や活動時の代謝が落ちてしまうと体重を減らそうとしても体が消費しようとしないので痩せにくい体質ということになります。
2.食欲が増す
体重が減ると身体のホメオスタシス(元に戻ろうとする働き)生理学的反応が働きます。
レプチンという食欲抑制ホルモンが低下し、グレリンという食欲刺激ホルモンが増加します。
その結果脳の食欲中枢(視床下部)で『もっと食べろ』という反応が強まり、食欲が亢進するのです😳
せっかく痩せようとしているのに食欲が我慢できずまた食べてしまうという繰り返しになってしまうのです💦
3.遺伝的要因
肥満が治らない理由の最後は遺伝的要因です。先程お話した僕のテニス部時代の先輩は遺伝的要因を抱えているかもしれません。
BMIの遺伝率はおおよそ40〜70%と言われています。*参考文献【3】
しかしポイントは痩せにくく太りやすいという人がいる、痩せる難易度が高い人がいるというだけで決して痩せられないわけではないということです。
戦時中は肥満症の有病率は現在よりもはるかに低かったのですから😌
どんな人でも食事量<エネルギー消費になれば体重は減少します‼️
ゼップバウンドの効果
マンジャロと成分は同じ
ゼップバウンドは肥満症の治療薬として保険の通っている薬ですが、実はあのマンジャロと全く同じ成分(一般名チルゼパチド)になります。
どちらも週一回専用のキットを用いて自分で皮下注射する薬です💊

なぜ名前が違うのか?ですが、マンジャロは糖尿病治療薬、ゼップバウンドは肥満症治療薬なので適応が違うので名前を分けているようですね。
製薬会社の方は厚生労働省が同じ名前を許してくれなかった、というようなことを言っていました🤔
値段設定は微妙に違いますが、マンジャロの方が維持量は少ないのでゼップバウンドの方が若干高くなりそうです😳
薬が維持量に達すると在宅自己注射指導管理料と合わせて自己負担3割でおおよそ月13000〜15000円くらいのイメージです。
食欲を抑制する作用機序
ゼップバウンドはGIP/GLP-1受容体作動薬です。視床下部のGIP/GLP-1受容体に作用して満腹感を高めて食欲を抑制することで総摂取カロリーを減少させます。
またin vitro(試験管内)では脂肪細胞のGIP受容体にも活性化して脂肪酸の細胞内への取り込み、脂肪分解を促進したようです。*参考文献【4】
副作用として投与初期の胃の内容物排泄遅延という作用があるので、食事をするとすぐ満腹になってしまいトータルで摂取する食事量を抑えることができます😌
ゼップバウンドは糖尿病の治療薬にもなり得るので低血糖のリスクもあるので気をつけるようにしましょう。
体重減少率は20%前後
肥満の日本人を対象とした第Ⅲ相臨床試験SURMOUNT-J試験という試験があります。BMI27以上35未満で2つ以上の肥満に関連する健康障害を2つ以上有する患者または、BMI35以上で肥満に関連する健康障害を1つ以上有する患者225例を対象としています。*参考文献【5】
この225例を二重盲検下において無作為に、ゼップバウンドの維持量を10mgとした群(平均体重92.5kg)、15mgとした群(平均体重91.9kg)、プラセボ群(平均体重92kg)の3つに分けて72週間の試験が行われました。
治療期間は72週間で治療開始前と終了後の体重の変化を比較しています。
最終的な結果はベースの体重から平均でプラセボ群-1.7%、ゼップバウンド10mg群-17.8%、ゼップバウンド-22.7%となっていました。
72週間(約17ヶ月)平均体重でゼップバウンド10mg群で92.5kg⇨76.6kg、15mg群で91.9kg⇨71.0kgまで減量できたという結果でした。15mg群では72週時点で20%以上の体重減少を達成できた人の割合はなんと64.47%だったようです。
成人になってここまで体重を減らせる人は一握りなので確かにすごい薬ですね😳
実際処方してもらえるのか?
ではそんな効果のあるゼップバウンドですが、パッと医療機関を受診したら処方してもらえるのでしょうか?🤔
保険治療で肥満症を治そうとするのですから簡単には処方してもらえません😌
栄養管理指導を受ける必要がある
肥満を治したいからといって外来ですぐに処方できるわけではありません。
まずは自己努力が必要です‼️🔥
栄養を見直しましょうとか運動しましょうといった指導を病院で管理栄養士に受ける必要があります。
治療すると決めたその日を1回目として半年間で合計4回は最低でも指導を受ける必要があります!!
肥満を治すには薬だけでなく自らの意志も大切になるのでまずは自分で頑張る必要があります💪
少なくともBMI27以上が治療対象
半年間努力したにも関わらず、高血圧症、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを診断されており、BMIが27kg/㎡以上で二つ以上の肥満に関連する健康障害を有するものに限られます。
ちなみに肥満関連の健康障害とは呪文みたいで申し訳ありませんが💦
耐糖能異常、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症、冠動脈疾患、脳梗塞、非アルコール性脂肪性肝疾患、月経異常・不妊、閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、運動器疾患、肥満関連腎臓病になります。
もしくはBMIが35以上なら健康障害を一つ以上有すれば処方対象となります。
ちなみにですが2型糖尿病のある方はマンジャロを処方してもらえますのでわざわざ指導を受けたりする必要はありません😌
まとめ
今回はマンジャロと同じ成分であるゼップバウンドについて解説しました。
BMI27、35kg/㎡がどれくらいかというと、それぞれ身長170cmの人なら78.03kg、101.5kgになります。
身長が150cmの人ならそれぞれ60.75kg、78.75kgになります。
BMI35となると早々いませんが、BMI27くらいの人はよく見かけるレベルですね😳
僕もダメもとで東京マラソンに申し込んだら当選してしまったので減量を頑張りたいと思います🔥
糖尿病の予防方法もリンク載せておきます今日から実践できる2型糖尿病予防法3選
肥満による健康障害を来さないようにみなさん健康に気をつけていきましょうね🎶
参考文献:【1】Adaptive thermogenesis in humansM Rosenbaum et al. Int J Obes (Lond). 2010 Oct.
【2】Effects of experimental weight perturbation on skeletal muscle work efficiency in human subjects Michael Rosenbaum et al. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2003 Jul.
【3】Variability in the Heritability of Body Mass Index: A Systematic Review and Meta-Regression
【4】日本イーライリリー株式会社 チルゼパチドの薬理試験(ENDO179試験 ENDO190試験)
【5】https://medical.lilly.com/jp/answers/242213
最終更新日:2025年9月21日
本記事の内容は医療専門職としての知見に基づいていますが、すべての読者に当てはまるわけではありません。個別の診断や治療は、直接の診察に基づいて行われるべきです。
鈴木智成(名もなき医師):日本救急医学会専門医 現在は整形外科に所属し救急と両立しながら奮闘中🔥
所属学会:日本救急医学会 日本整形外科学会 日本整形外傷学会