後悔を予防しよう‼️延命治療する?しない?

予防

皆さんこんにちは、名もなき医師です。ある日突然あなたの元に電話がかかってきます。

『◯◯(あなたの家族)さんが救急車で搬送されて危篤状態です。心配蘇生を行いますか?』

突然のことなので『はい、お願いします』と返事をされる方も多いです。親の死に目に会えなかったら一生後悔が残るかもしれませんよね😢

しかし僕は救急医として患者本人の意思がわからないままの延命治療をたくさん見てきて、これは良い選択だったのか?と思ってしまうことが多々ありました😳

こんな状態になるならあの時治療をお願いしなければ良かった、、、

なんて後悔を抱かないように今のうちにしっかり知識を持っておきましょう‼️

延命治療したらどうなる?

そもそも延命治療とは何を指すのでしょうか?救急の現場では集中治療という言葉もよく使われます。

早速比較していきましょう!

延命治療と集中治療

延命とは命を延ばすと書きます。つまり延命治療とは自然に死に向かう状態を出来るだけ延ばすという意味合いです。

対して集中治療は原因疾患を治療し回復を目指します。ではそれぞれの具体例を出しましょう。

90歳の男性、肺癌の末期で半年前から認知機能の低下であまり会話が出来ません。最近胸に水がたまってきて息苦しくなり救急車で病院に搬送されました。胸に水がたまっているせいで今にも息が止まりそうな状態で人工呼吸が必要な状態です。

床ずれ・褥瘡を予防している看護師のイラスト

もう一つ例を出します。

生来健康な25歳の男性、高速道路で時速100キロで乗用車運転中に他車と接触し横転、大腿骨が変形して骨が飛び出ており、出血量が多く顔面蒼白で会話もままならず、早急に人工呼吸、輸血が必要な状態です。

シートベルト未着用時の事故のイラスト

どちらかが延命治療でどちらかが集中治療です。頭の良い皆さんなら簡単な問題ですが、最初が延命治療、二つ目が集中治療になります😌

どちらも重症患者に対して行う治療なのですが、集中治療では患者の回復を目指すのに対して延命治療は近いうちに訪れるであろう死期を少し延ばすというものです😳

簡単に区別すると元の状態に回復出来そうか出来なさそうかの違いですね😌

延命治療したらどうなる?

集中治療が必要なことは自明の理です。どんなに重症であろうと社会復帰出来る人の命を諦めることは基本的にあってはなりません。

しかし延命に関してはどうでしょうか?もう一つ具体例をみてみましょう。

93歳の男性、施設で寝たきりの状態、認知症で自分の子供のことも覚えていません。誤嚥による肺炎を繰り返しており、今回は人工呼吸が必要なほど悪くなりました。家族の希望で人工呼吸器を用いた治療になりました。

この先どうなると思いますか?😳

誤嚥による肺炎は細菌によるものなので抗菌薬である程度改善しました。しかし93歳と超高齢で人工呼吸器につながれている期間が長くなると呼吸器に依存してしまい、自分で呼吸する力がなくなってしまいました😱

すると次に行われるのは気管切開といって首の前から気管という空気の通り道に手術で穴を開けてチューブをいれます。チューブに人工呼吸器を繋いでそこから呼吸することになります。

患者本人の意識はありません。身体には呼吸器や点滴類や尿道バルーンなど管がたくさん繋がっています。生命維持装置に相当する人工呼吸器を外すことは出来ません。身体は弱っているのですぐに何らかの病気になり医師はその問題に対処します。

(ちなみにこの写真、気管切開のイメージ図を作るのにChat GPTに作ってもらったのですが、おかしいところがいくつかありましたが面白いので採用しました。最後に答えを書いておきますので探してみてください。)

この状態で患者は心臓は動いており生命維持されていますが生きていることを楽しめているでしょうか?😳難しい問いですよね。

実際そういう患者さんを診ていて活き活きしている!と僕が感じたことはなく、むしろ病気で苦しい表情をされることが多いのでこれは正しい医療なのだろうか?と考えてしまいます。

御家族の方が生きてくれているそれだけでいい‼️と思ってくれているならまだその人には存在意義があります。しかし御家族でさへ、「こんな状態なら生きているのがかわいそうだ」という感情に至ってしまった場合その人はなんのために生きていくのでしょうか?😶

普通に生活しているとこんなことは考えないと思います。しかし一度考えてみることは大切です。なぜならその時はいずれ突然起こってしまうからです🙄

ほとんどは税金負担

先ほどの症例では患者は病院に来る前は施設入所中です。患者が入院になったからといって施設費がタダになることはありません。病院の入院費・治療費と施設費がダブルで発生するのです。

家族の負担額は?

お金は本人の資産から支払われるのが筋ですが、実際管理するのは家族になります。(ちなみに実は患者本人の支払い能力がない場合に家族に支払い義務は生じません。)かかる費用をシミュレーションしてみましょう。

施設費用

施設にもたくさん種類がありますが、全施設の日本の月額施設費用の中央値は13.5万円、平均額は15.2万円です。

入院したからといって施設をすぐに解約するわけではありませんよね?その人の帰る場所なのですから。

気管切開で呼吸器依存状態になったとしてもう一生病院生活になると決まった時に施設の解約を決定すると思います。

入院費用

施設に帰れないと判断されるまでだいたい3ヶ月くらいでしょうか。その間病院の入院費用はいくらになると思いますか?😳

個室などを希望しなければ急性期病院1ヶ月で約2万円➕食事代です。え、意外と安くない?って思いませんでした?それは日本に高額療養費制度があるからです。

高額療養費制度は申請して2〜3ヶ月して返ってくるので病院では治療にもよりますが、10〜20万円くらいの請求額があると思いますので一旦支払いは必要です😌

それも支払いが難しいという人は限度額適用認定証という窓口での支払い自体が限度額まででいいですよ、という制度もあるので知識として知っておきましょう🎶

高額療養費制度を利用すれば実際にかかる費用は最初の1ヶ月で急性期病院での入院費用は2〜3万円程度ということになります。

ちなみにずっと療養病院にいることになれば食事代と居住費というのがかかるので、月々7万円くらいになります😌

だから合計で発生する費用は施設費用13〜15万円X3ヶ月分➕入院費用2万円(最初の1ヶ月)+7万円X2ヶ月(療養病院)で50〜60万円くらいになります。

日本は恵まれている

日本は世界的にみてもかなり恵まれている方です。先程の93歳女性の肺炎の方が集中治療室に1ヶ月入院したとしたら発生する医療費は総額いくらでしょうか?

ICU管理料と検査・処置・治療などを合わせると1ヶ月で120〜180万円(検査や処置の内容によって幅が出ます)くらいかかります。

療養病院に移っても医療費の総額が月々50〜60万円かかります。自己負担分以外は社会保障費から賄われることになります😳

一人一人にそれくらいかかるので働く現役世代の税金、社会保険料は高くなるのは当然ですよね?💦

集中治療の適応は?

延命治療をすることでその先に起こる未来と個人の負担額、国に発生する医療費のお話をしました。

その上で僕の考えを述べさせて頂きます。

個人の観点からすると家族の命を諦めてもいいという人は少ないと思います。普段から考えておかないと急にそういった状態になった時に必ず動揺して混乱するので予め考えておくことが理想です。

大切なのは御本人の健康状態次第です。年齢に関わらず、高齢であっても元気に過ごしていてまた元の状態に戻れる可能性が高いならその人に対する治療は延命治療ではなく、集中治療になります。

しかし寝たきりに近く、認知症も重度であるなら頑張って治療してもその先には後悔が待ち受けているかもしれません。また集中治療もしんどい治療なので元気な人であっても人工呼吸が必要な状態になった時は「もう充分に生きたからしんどい治療はしないでくれ」と意思表示されている人もいます。

一番優先すべきなのは本人の意思です。にも関わらず現代の医療では最終判断が家族になるケースが多くなっています。だから我々もそうなる前に考えておくべきなのです。個人的にはマイナンバーカードと紐付けた電子保険証に意思表示項目を設けておくというのがいいのではないかと密かに思っています😌

また日本国全体を考えた時に年間の医療費はどんどん膨らんできています。1980年に約12兆円、2000年に約30兆円だった医療費は2022年に約46兆円になりました。2040年には約66兆円に登るのではないかと予想されています😱

もうこれを止めることは出来ないと僕は思います。若い世代は税金や社会保障費が増えていく一方でどんどん貧しくなり、子供を産むことが難しいので日本が発展する未来は見えません。

ならばせめて誰もが望まない延命治療は減らしていくべきではないでしょうか?

死ぬ時のことって考えたくないですし、人と話しにくいですよね?しかし自分や家族の死に際に後悔しないためにも、思考を巡らせておくことは絶対に必要なので今回は取り上げました。皆さんにとって良い機会になれば幸いです。

(先ほどの問いの答えを書いておきます。高齢男性は気管切開チューブから呼吸をしているので鼻からしている酸素は無意味になります🙄もう少し細かいことを言うと心電図シールが服の上から付いている、モニターの波形がおかしいというところもありますね。)

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